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A..5.4 QR 分解

$A$ を実正則行列とするとき、 実直交行列 $Q$ と、上三角行列 $R$

\begin{displaymath}
A=Q R
\end{displaymath}

を満たすものが存在する。特に $R$ の対角成分は正であるように取ることができ、 そういうものに限ると分解は一意的である。 これを $A$QR 分解と呼ぶ9

$A=(a_1 a_2 \cdots a_n)$ とするとき、$a_1$, $\cdots$, $a_n$ から、 Gram-Schmidt の直交化を行って正規直交基底 $q_1$, $\cdots$, $q_n$ を作る 計算は、$A$ の QR 分解を求めていることになる。

しかし QR 分解を求める場合、 この素朴な Gram-Schmidt の直交化法を 適用することはない10

LU 分解と同様に QR 分解があれば連立1次方程式は簡単に解ける。 例えば $A x=b$ を解きたいときに、$A=Q R$ という QR 分解が得られたとしよ う。

\begin{displaymath}
x=R^{-1} (Q^{-1} b)=R^{-1}(Q^T b)
\end{displaymath}

であるから、$x$ の計算は簡単である (つまり、 実直交行列の逆行列はもとの行列の転置行列に他ならないから、 計算するまでもなく分かっているわけ)。


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Masashi Katsurada
平成20年10月18日