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0.0.0.3 解説

上限と下限について理解してもらいたいが、 不等号の向きを逆にするだけのことだから、 上限についてだけ説明する。まず基本となる定理を見ることから。

定理 (Weierstrass (ワイエルシュトラス))
$ \R$ の部分集合 $ A$ が空でなく、上に有界ならば、$ A$ の上限が存在する。

(この定理は、実数体 $ \R$ の連続性というものの一つの表現である。 証明は実数の構成に依存していて難しいので、ここでは述べない。)

$ A$ が上に有界であるとは、$ A$ が少なくとも 1 つ上界を持つこと、 すなわち

$\displaystyle (\exists U\in\R) (\forall a\in A)\quad a\le U
$

が成り立つことをいう ($ U$$ A$ の上界という)。

$ A$ の上限とは、$ A$ の上界の最小値のことを指す。すなわち

$ U\in\R$$ A$ の上限    $ \LongIff$     $ \Biggl\{$
(i)
( $ \forall a\in A$)    $ a\le U$
(ii)
( $ \forall\eps>0$) ( $ \exists a\in A$) s.t. $ a>U-\eps$

(i) は $ U$$ A$ の上界であることを表している。 (ii) は $ U$ を少しでも小さくすると $ A$ の上界ではなくなることを示す (これで最小性を表している)。

上限は最大値を一般化した概念である。実際

  1. 最大値が存在するとき、それは上限である。
  2. 最大値も上限もつねに存在するとは限らないが、 最大値が存在しなくても上限が存在することは多い。

特に $ \sup$ という記号は、 $ A\subset \R$, $ A\ne \emptyset$ なる $ A$ に対して、

$\displaystyle \sup A:=
\left\{
\begin{array}{ll}
\mbox{$A$ の上限} & \mbox{($A...
...の上限が存在しないとき、つまり $A$ が
上に有界でないとき)}
\end{array}\right.
$

で定義されるので、いつでも意味を持つことに注意しよう。


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Masashi Katsurada
平成19年10月2日