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線形化写像は元の関数を近似する

まず「全微分」の定義を復習しよう。 $ f$$ a$ で全微分可能であるとは、

$\displaystyle \exists A\in M(m,n;\R)$   s.t.$\displaystyle \quad
\lim_{h\to 0}\frac{\;\textcolor{blue}{\bigl\Vert}
f(a+h)-f(a)-A h\textcolor{blue}{\bigr\Vert}\;}{\left\Vert h\right\Vert}=0
$

が成り立つことをいい ( $ \textcolor{blue}{\Vert \Vert}$ はあってもなくても同じ, また$ A h$ は行列 $ A$ とベクトル $ h$ の積を意味していることに注意する)、 一意的に定まる行列 $ A$ のことを $ f$$ a$ における全微分係数と呼び、 $ f'(a)$ で表す。


これから、$ f$$ a$ で全微分可能ならば

$\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)-f'(a) h}{\left\Vert h\right\Vert}=0
$

が成り立つ。$ h\to 0$ のとき、分母は 0 に収束するので、 分子はそれよりも速く 0 に収束する、ということである。 このことを

$\displaystyle f(a+h)-f(a)-f'(a)h=o\left(\Vert h\Vert\right)$   $\displaystyle \mbox{($h\to 0$)}$

と書く。

不正確な書き方になるが1$ \Vert h\Vert$ が十分小さいとき、

$\displaystyle f(a+h)\kinji f(a)+f'(a)h
$

が成り立つ。言い方を変えると、$ x$$ a$ に十分近いとき、

$\displaystyle f(x)\kinji f(a)+f'(a) (x-a)
$

が成り立つ。 この右辺の式で表される写像、すなわち

$\displaystyle \Omega\ni x\mapsto f(a)+f'(a)(x-a)\in\R^m
$

$ f$ の ($ a$ における) 線形化写像 (1次近似) と呼ぶ (これはちゃんとした定義である)。


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Masashi Katsurada
平成23年6月5日