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6.1 Cassini の橙形

2定点からの距離の積が一定である点の 軌跡は Cassini の橙形 (Cassini の卵形線, Cassini oval, oval of Cassini) である。 Giovanni Domenico Cassini (1625-1712) にちなんで名付けられた。

ちょっと整理
平面上の $ 2$ 定点からの距離の和、差、積、 商が一定である点の軌跡を求める問題は有名である。

  • 和が一定 … 楕円
  • 差が一定 … 双曲線
  • 積が一定 … Cassini の橙形
  • 商 (比) が一定 … Apollonius1 の 円 (特別な場合として垂直二等分線)

二定点を $ (\pm a,0)$ として、距離の積を $ b^2$ とすると、

$\displaystyle \left[(x-a)^2+y^2\right]\left[(x+a)^2+y^2\right]=b^4
$

という方程式が得られる。

$\displaystyle (x^2+y^2+a^2)^2=4a^2x^2+b^4.
$

極形式では

$\displaystyle r^4-2a^2r^2\cos2\theta+a^4=b^4.
$

$ b$ が小さく、$ b<a$ ならば二つの連結成分からなり、 $ a\le b$ ならば連結な曲線である。

$ b=a$ ならば、 $ (x^2+y^2)^2=2a^2(x^2-y^2)$ となるので、 $ a':=\sqrt{2}a$ とおくと

$\displaystyle (x^2+y^2)^2=a'^2(x^2-y^2)
$

となる。 これはベルヌーイのレムニスケート (lemniscate of Bernoulli) と呼ばれ、 8の字形をしている。

$ b>a$ ならば正則な閉曲線である。 特に $ a<b<\sqrt{2}a$ ならば凹みのある閉曲線、 $ b\ge \sqrt{2}a$ ならば凸閉曲線である。

図 3: Cassini の oval ($ a=2$, $ b=2.1$)
\includegraphics[width=5cm]{eps/cassini.eps}
    
図 4: Cassini の oval ($ a=2$, $ b=3$)
\includegraphics[width=5cm]{eps/cassini2.eps}

2変数関数のレベルセットを描きたい場合、 Mathematica では、ImplicitPlot[] が利用できる。
Decartes の葉線, レムニスケート, Cassini の橙形を描く
  Needs["Graphics`ImplicitPlot`"]  (最初にこのオマジナイが必要)

  decartes[a_]:=ImplicitPlot[x^3+y^3-3 a x y==0,{x,-4,4},{y,-4,4}]
  lemniscate[a_]:=ImplicitPlot[(x^2+y^2)^2==a^2(x^2-y^2),{x,-4,4},{y,-4,4}]
  limason[a_,b_]:=ImplicitPlot[(x^2+y^2-a x)^2==b^2(x^2+y^2),{x,-4,4},{y,-4,4}]
  cassini[a_,b_]:=ImplicitPlot[(x^2+y^2+a^2)^2==4a^2x^2+b^4,{x,-4,4},{y,-4,4}]

  g=lemniscate[4]                  (a=4 のレムニスケートを描く)
  SetDirectory[$HomeDirectory <> "\My Documents"]]
  Export["lemniscate.eps", g]

なお、ここでは $ x$, $ y$ 両方の範囲を指定したが、 こうすると内部で ContourPlot[] を利用して等高線を描画する。 これに対して、 $ x$ または $ y$ の一方のみの範囲を指定すると、 Solve[] を利用して曲線を描画する。 この方が処理は重いが、結果はきれいになる (そうである)。


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Masashi Katsurada
平成20年8月3日