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高校の数学Aの論理を超特急で振り返る

桂田 祐史


Date: 2013年4月11日, 2014年4月10日


数学的に正しいか正しくないかが判定できる文章や式を命題という。

(「数学的」の代わりに「明確に」としてある教科書もある。)

$ 100!$ は大きい数である。」という文章は命題ではない。

命題が正しいとき、その命題は (true) であるといい、 正しくないとき、その命題は (false) であるという。

命題が真であることを論理的に明らかにすることを証明という。

$ x>3$ 」は$ x$ の値を定めると命題になる。 このような文章や式を$ x$ についての ($ x$ に関する) 条件という。

条件を考える場合には、 考察の対象とするもの全体の集合を前もって決めておく必要がある。 その集合を、その条件の全体集合という。

(大学の数学では、条件のことを命題関数とか述語 (predicate) ともいう。)

命題「$ p\THEN q$ 」が偽であることを証明するには、 $ p$ であるのに $ q$ でない (条件 $ p$ をみたすが条件 $ q$ をみたさない) という例を1つあげればよい。 そのような例を命題「$ p\THEN q$ 」に対する反例という。

条件 $ p$ に対して、「$ p$ でない」ことを $ \overline{p}$ で表し、 条件 $ p$ 否定という。

命題「$ p\THEN q$ 」において、 $ p$ 仮定$ q$ 結論という。

命題「$ q\THEN p$ 」を命題「$ p\THEN q$ 」のという。

命題「 $ \overline{q}\THEN \overline{p}$ 」を命題 「$ p\THEN q$ 」の対偶という。

命題「 $ \overline{p}\THEN \overline{q}$ 」を命題 「$ p\THEN q$ 」のという。 (あまり使わない。)

命題「$ p\THEN q$ 」が真であっても、その逆「$ q\THEN p$ 」は必ずしも真でない。

命題「$ p\THEN q$ 」とその対偶「 $ \overline{q}\THEN \overline{p}$ 」の真偽は 一致する。

命題「$ p\THEN q$ 」に対して、その対偶「 $ \overline{q}\THEN \overline{p}$ 」を証明出来れば、「$ p\THEN q$ 」が証明できたことになる。

命題が成り立つことを証明するため、 「命題が成り立たないとすると(命題の否定を仮定すると)矛盾する」 ことを示す方法がある。この証明法を背理法という。

命題「$ p\THEN q$ 」が真であるとき、 $ p$ $ q$ であるための十分条件といい、 $ q$ $ p$ であるための必要条件という。

命題「$ p\THEN q$ 」と「$ q\THEN p$ 」がともに真であるとき、 $ p$ $ q$ であるための必要十分条件といい、 「$ p\Iff q$ 」と表す。 このとき $ p$ $ q$ は同値である、ともいう。

ド・モルガンの法則     $ \overline{p\wedge q}\Iff\overline{p}\vee\overline{q}$ , $ \overline{p\vee q}\Iff\overline{p}\wedge\overline{q}$

(ここは $ p$ でなく $ p(x)$ と書かせてもらう。) $ x$ に関する条件 $ p(x)$ に対して、 集合 $ P=\left\{x\vert p(x)\right\}$ を使って考えることが多い。 $ Q=\left\{x\vert q(x) \right\}$ とするとき、 $ p(x)\THEN q(x)$ が真であることと $ P\subset Q$ が成り立つことは同じである。 集合の包含関係は (ヴェン図というもので) 図示できるので、 図を用いて考えたりしている。

高校数学の論理についてのコメント・ツッコミ
もちろん間違っているわけではないが、 中途半端な(不自然な制限がある)感じがする。
  • 変数 $ n$ を含む条件も、 単に $ p$ のような文字$ 1$ つで (つまり $ n$ なしで) 表す。
    (なぜか高校数学では、命題を文字で表さない!( 大学では、命題は $ p$ , 変数 $ n$ に関する 条件は $ p(n)$ のように表す。こちらの方が筋が通っているだろう。)
  • 「かつ」と「または」は日本語で済ませる。 ($ \wedge$ , $ \vee$ などの記号は使わない。)
  • 命題の否定は出て来ない (なぜだ?)。条件の否定というのはある。
  • 条件 $ p$ の否定は $ \overline{p}$ で表す。($ \neg p$ ではない。)
  • 量称記号 $ \forall$ , $ \exists$ は使わない。 大学の数学では

    $\displaystyle \forall n$   $ n$ $ 4$ の倍数$\displaystyle \quad\THEN$   $ n$ $ 2$ の倍数

    と書きたいところを単に

       $ n$ $ 4$ の倍数$\displaystyle \quad\THEN$   $ n$ $ 2$ の倍数

    と書いて済ませる。(高校数学で「$ p\THEN q$ 」と書いてあったら、 この授業としては、 変数をあらわに「$ \forall n$      $ p(n)\THEN q(n)$ 」と書きたい)。
  • ド・モルガンの法則は書いてあるが、 分配法則

    $\displaystyle p\AND(q\OR r)\equiv (p\AND q)\OR(p\AND r),\quad
p\OR(q\AND r)\equiv (p\OR q)\AND(p\OR r)
$

    などは書いてないことが多い。
  • 命題「$ p\THEN q$ 」の否定というのは出て来ないが、 命題「$ p\THEN q$ 」が偽であるということを証明するために、 反例 (つまり $ p$ は成り立つが、 $ q$ は成り立たない $ n$ ) を見出すことはしている。
  • 矛盾という言葉は出て来るが、矛盾とは何か、 説明がない教科書が多い? (何だそれは)




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桂田 祐史
2014-04-16