4 条件付き確率と乗法定理

$ A$, $ B$ を事象とする。$ A$ が起こったことが分かったが、$ B$ が起こっ たかどうか分からないという状況で、$ B$ の起こりやすさを示す度合 -- 事 象 $ A$ のもとでの事象 $ B$ の条件つき確率 $ P_A(B)$ -- を導入する。


\begin{reidai}\upshape
正しいサイコロを振ったところ、出た目...
...{\sharp\{1,3\}}{\sharp\{1,3,5\}}=\frac{2}{3}. \qed
\end{displaymath}\end{reidai}

上の例題では、

$\displaystyle P_A(B)=\frac{\sharp A\cap B}{\sharp A}
$

と計算していることになるわけだが、このように事象に含まれる標本点の個数 を数えれば良かったのは、「正しいサイコロ」を振る試行だったからである。 一般の場合に通用するためには少し修正する必要がある。実際には

$\displaystyle P_A(B)=\frac{P(A\cap B)}{P(A)}
$

を条件つき確率 $ P_A(B)$ の定義とすればよいであろう (これは証明できるこ とでなく、定義することである)。ただし、これが意味を持つには $ P(A)\ne
0$ でなければならない。


\begin{jremark}\upshape
テキストで、しばしば $A\ne \phi$ と書い...
...$A\ne \phi$ であっても $P(A)=0$ とは限らないから。
\end{jremark}


\begin{jremark}\upshape
$P(A)=0$ の場合に $P_A(B)$ を定義するには...
...t\in B$)}
\end{array} \right.
\end{displaymath}と定義する。
\end{jremark}


\begin{jproposition}\upshape
$P$ を標本空間 $U$ 上の確率法則とす...
..._A(B\cup
C)=P_A(B)+P_A(C)$.
\item
$P_A(U)=1$.
\end{enumerate}\end{jproposition}
この命題から例えば

$\displaystyle P_{A}(\overline B)=1-P_{A}(B),
$

$\displaystyle P_A(B\cup C)=P_A(B)+P_A(C)-P_A(B\cap C)
$

などの公式が自動的に得られる。

条件つき確率 $ P_A(B)$$ P(B)$ と等しくなることも、等しくならないこ ともある (例題2, 例3)。


\begin{jdefinition}\upshape
確率空間 $(U, P)$ における $A$, $B$ に...
...tbf{従属}\index{じゅうぞく@従属}であるという。
\end{jdefinition}

\begin{jtheorem}\upshape
$A$ と $B$ が独立 $\LongIff$ $P(A\cap B)=P(A) P(B)$.
\end{jtheorem}


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桂田 祐史