8 応用: ある計算問題 (有理関数の Taylor 展開を求める) の答の検算

$\displaystyle f(z)=\frac{z^3-3z^2-z+5}{z^2-5z+6}.
$

0 の周りの Taylor 展開を求めよ、という問題。

人手で解く場合は、まず $ f(z)$ を部分分数に分解する。 そのためには、 $ z^3-3z^2-z+5$$ z^2-5z+6$ で割りたくなる。
A=z^3-3z^2-z+5
B=z^2-5z+6
f=A/B
q=PolynomialQuotient[A,B,z]
r=PolynomialRemainder[A,B,z]
実は商と剰余は一気に計算できることに気づいた (何かあるはず、と思っていたが)。
{q,r}=PolynomialQuotientRemainder[A,B,z]

これから商 $ q=z+2$, 余り $ r=3z-7$ が求まる (商は quotient, 余りは remainder. polynomial は多項式という意味)。ゆえに

$\displaystyle f(z)=\frac{(z+2)(z^2-5z+6)+3z-7}{z^2-5z+6}
=z+2+\frac{3z-7}{(z-2)(z-3)}.
$

この右辺を部分分数分解しても良いが、 そもそも Mathematica にやらせるのならば、 最初から $ f(z)$ の部分分数分解を指示してもよい。

Apart[r/B]

Apart[f]
それぞれ $ \dfrac{2}{-3+z}+\dfrac{1}{-2+z}$, $ 2+\dfrac{2}{-3+z}+\dfrac{1}{-2+z}+z$ となる。

結局

$\displaystyle f(z)=z+2+\frac{1}{z-2}+\frac{2}{z-3}.
$

Series[f,{z,0,10}] とすると、 0 の周りの Taylor 展開を $ 10$ 次の項まで求めることが出来る。

$\displaystyle f(z)=
\dfrac{5}{6}+\dfrac{19z}{36}-\dfrac{43}{216}z^2-\dfrac{113}{1296}z^3
-\dfrac{307}{7776}z^4-\cdots$(途中省略)$\displaystyle -\cdots
-\frac{181243}{362797056}z^{10}+O(z^{11})
$

が得られる。series は級数という意味の英単語である。

0 の周りのTaylor展開の第$ n$項は
SeriesCoefficient[f,{z,0,n}]
で求められる。

Image result7

$ f$0 の周りの Taylor 展開は

$\displaystyle f(z)=\frac{5}{6}+\frac{19}{36}z-\sum_{n=2}^\infty
\left(\frac{1}{2^{n+1}}+\frac{2}{3^{n+1}}\right)z^n.
$

Sum[] で検算が可能で、
5/6+19z/36-Sum[(1/2^(n+1)+2/3^(n+1))z^n,{n,2,Infinity}]
Simplify[%]
とすると、

$\displaystyle \frac{5-z-3z^2+z^3}{6-5z+z^2}
$

が得られる。無事、$ f(z)$ と一致したので、ほっと一息。



桂田 祐史