2.1.0.1 Riemann による解の存在証明のあらすじ

境界条件 $ u=g_1$ (on $ \rd\Omega$) を満たす $ u$ のうちで

$\displaystyle J[u]=\dint_\Omega\left(u_x^2+u_y^2\right)\DxDy$   (この $ J$ を Dirichlet 積分と呼ぶ)

を最小にするものは、 $ \Laplacian u=0$ を満たす。 この事実を Dirichlet の原理と呼ぶ。 実際、$ v$$ v=0$ (on $ \rd\Omega$) を満たす任意の関数とするとき、

$\displaystyle f(t):=J[u+t v]$   ( $ t\in\mathbb{R}$)

$ t=0$ で最小となる (なぜならば、$ u+t v$ も同じ境界条件を満たすので、 最小性の仮定から $ J[u+t v]\ge J[u]$. これを $ f$ で言い換えると、 $ f(t)\ge f(0)$. これは $ f$$ t=0$ で最小になることを意味する。)。 ところで

$\displaystyle f(t)=J[u]+2t\dint_\Omega\left(u_x v_x+u_y v_y\right)\DxDy
+t^2\dint_\Omega\left(v_x^2+v_y^2\right)\DxDy
$

であるから、$ f$ は2次関数であり、$ t=0$ で最小となるためには

   $ 1$次の係数$\displaystyle \quad
\dint_\Omega\left(u_x v_x+u_y v_y\right)\DxDy=0
$

が必要十分である。Green の積分公式2 を適用して

$\displaystyle \dint_\Omega(u_{xx}+u_{vv})v\;\DxDy=0.
$

これが任意の $ v$ について成り立つことから、 $ \Laplacian u=u_{xx}+
u_{yy}=0$.

以上の議論から、 $ J[u]$ を最小にするような $ u$ を見出せば問題が解決することが分かる。 $ J$ は常に $ J\ge 0$ を満たすので、$ J$ が下に有界でありることは明らかで、 従って $ J$ の下限が存在する。 Riemann は、 (この下限は最小値であるから) 最小値を与える $ u$ が存在する、と議論したのだが、 Weierstrass は「下限は最小値である」ことに疑義を示した (「数学解析」を学んだ人は、 いかにも Weierstrass がツッコミそうなところと思うかも)。 $ \qedsymbol$


残念ながら若くして亡くなった Riemann は、 Weierstrass の批判に答えることが出来なかった。 この論法による完全な証明は、 約 50 年後 (1900年頃) に D. Hilbert が解決するまで持ち越された。

本当は、Dirichlet の原理は、 C. F. Gauss (1777-1855) がルーツで、 物理学の世界ではすでに知られていた考え方で、 それを Riemann が純粋数学に応用したのだ、という見方をする人もいる。



桂田 祐史