2 (Lebesgue 積分版) 微分積分学の基本定理

この節の内容は Lebesgue 積分の常識で、 多くのテキストに載っているが、 関連する結果が非常に豊富という点で 特に吉田 [3] を強く推奨しておく。

この節の内容を一言でまとめると、 『絶対連続であれば、 ほとんど到るところ微分できて、 「自然な」公式が成り立つ』となる。 こういう言葉はないが、 「ルベーグの意味で微分可能」 とでも言うにふさわしい性質である。


\begin{jtheorem}[Lebesgue の微分定理 --- 微積分の基本定理$\mathrm{I...
...laymath}
y'(t)=x(t)\quad\mbox{a.e. on $[a,b]$}.
\end{displaymath}\end{jtheorem}

この定理は名前の通り、Lebesgue による。 証明は Lebesgue 積分を扱っている大抵の本に載っている。

ある意味で逆が成立する。

\begin{jtheorem}[Radon-Nikodym の定理]
絶対連続ならば可積分関数...
...splaymath}
y'(t)=x(t)\quad\mbox{($t\in[a,b]$)}.
\end{displaymath}\end{jtheorem}

この定理の証明も Lebesgue 積分を扱っている大抵の本に載っている。 なお、絶対連続性の仮定は本質的である。 そのことは (もちろん Lebesgue の微分定理からも納得できようが) 次の例からも 納得できるであろう。 $ P_C$ $ [0,1]$ 上の Cantor 関数とすると、 $ P_C$ は連続かつほとんど到るところ $ P_C'(t)=0$ , $ P_C(0)=0$ , $ P_C(1)=1$ . それゆえ

$\displaystyle P_C(1)-P_C(0)=1\ne 0=\int_0^1 P_C'(t)\,\D t.
$


\begin{jtheorem}[微積分の基本定理$\mathrm{II}'$]
$y\in\mathrm{AC}([a,b]...
...で存在を保証されるところの微分係数である。
\end{jtheorem}
$ \mathrm{II}'$ の証明     Radon-Nikodym の定理より、 $ \exists z\in L^1(a,b;\R)$ s.t.

$\displaystyle y(t)=y(a)+\int_a^t z(s)\,\D s$   $\displaystyle \mbox{($t\in[a,b$)}$$\displaystyle .
$

これから、ほとんどすべての $ t\in[a,b]$ に対して、 $ y'(t)=z(t)$ . これから

$\displaystyle \int_a^b y'(t)\,\D t=\int_a^b z(s)\,\D s=y(b)-y(a).\qed
$


\begin{jtheorem}[微積分の基本定理$\mathrm{III}'$\ (部分積分)]
$x$, ...
...で存在を保証されるところの微分係数である。
\end{jtheorem}
Radon-Nikodym の定理から、 ほとんど到るところ $ x'(t)$ , $ y'(t)$ が存在する。そういう $ t$ に対して、

$\displaystyle \left(x(t)y(t)\right)'=x'(t)y(t)+x(t)y'(t)
$

が成り立つ (証明は普通の微積分の積の微分法)。 右辺の各項は可積分関数と連続関数の積であるから可積分であり、 それゆえ左辺も可積分である。積分すると

$\displaystyle \int_a^b \left(x(t)y(t)\right)'\,\D t
=\int_a^b x'(t)y(t)\,\D t+\int_a^b x(t)y'(t)\,\D t.
$

$ \mathrm{II}'$ より左辺は $ \left[x(t)y(t)\right]_a^b$ に等しい1$ \qedsymbol$

桂田 祐史
2016-12-30