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4.2 一松先生の本

本棚にある本を端から順番に邦書をチェックしていって、 ようやく見覚えのある記述に遭遇した。一松信著、数値解析、 朝倉書店の第3章(P61)に曰く。

§11. 数学では普通にはあまりうるさく区別しないが、 実は行列の固有値問題にはいろいろの意味がある。 定数係数連立線型常微分方程式系 $ y'=Ay$ の係数行列$ A$ は混合テンソルであって、 座標系の変換の標準化による Jordan の標準系が自然な意味をもつ。 これに対して、2次形式の係数行列 $ A$ の固有値は、 標準的な正値対称行列 $ B$ を定めて初めて意味がある。 普通には $ B$ を単位行列 $ I$ としているのだが、 その意味では、 ``一般化された固有値問題'' とよばれる $ \det(A-\lambda B)
=0$ の方がかえって本質的である。 §16 の $ m\times n$ 次の長方形行列 $ A$ の特異値も、 $ m$ 次, $ n$ 次の標準正値対称行列 $ B$ , $ C$ を定めて初めて意味がある。 これも普通には $ B$ , $ C$ をそれぞれの次元の単位行列に定めて扱う。 以上は数値解析自体の問題ではないかも知れないが、 実用上には重要な背景である。 なおこの点を明確にご注意下さった東京大学伊理正夫教授に感謝する。
とか。やはり伊理先生は偉いんだ、と再認識したが、 この問題に関しては直接得るところはなし。


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桂田 祐史
2011-11-14