10 日本語フォントの選択を考える (原ノ味フォントにこんにちは)

ここ何年か、日本語のフォントとして、 macOS に付属していたヒラギノフォントをメインで利用してきた。

初めて話を聞いたとき、Adobe-Japan1-5 のすべての文字を扱えるだけでなく、 日本語文字の字形の違いも扱えて (Unicode が同じでも形の違う場合は違う文字として扱う)、 ついでにフォントの形が美しく (こちらがメインかも(笑))、 良いことづくめと思って、Mac もいいな、と思ったのを覚えている (この辺は正しく理解できていないかもしれないけれど、あまり気にしないで…)。

Mac を使うようになって、少しずつヒラギノフォントの使い方に慣れていった。 思い返すとちょっと懐かしい。

ところが、Apple が 10.11 (ElCapitan) から、ヒラギノフォントを、 OpenType Collection (OTC) 化して、色々と面倒なことになった。 細かいところで字形が変わったというのはさておき、 Ghostscript や TEX からの利用に問題が生じた。


(字形については、 「OS X El Capitan(10.11.2)搭載のヒラギノフォントと弊社製品版フォントについて」)

(TEX での利用については、(準備中))


TEX に関しては、ボランティア達の精力的な働きで、 何とか OTC のフォントを扱えるようになったが、 Ghostscript の方は使えないようになってしまった。

Mac に元々搭載されていたフォントは、 macOS をアップグレードしても使って良いらしい、ということで、 OS をアップグレードするたびに、 Mavericks にあったフォントを引き継いで来た。

身の回りに新しい Mac が増えて、だんだんそれが使えなくなってきたが、 所属する大学のメール・システムの関係で、古めの Mac がほぼ使えなくなって、 完全に行き詰まってしまった。

どうやら久しぶりに利用する日本語フォントを見直す必要があるみたいだ。

ヒラギノが使えなくなるとすると、IPA フォントだろうか? IPAフォント は、 IPA (情報処理推進機構) により、 オープンソースライセンスにのっとって配布されている、 JIS X 0213:2004に準拠した OpenType フォントである。

(東風とか東風代用品とかさざなみとか。小塚とか。色々思い出されるけれど…)

IPA フォントはなかなか良いけれど、ヒラギノと比べると、 少しわびしいな、と思っていた。

でも、どうもフォント事情に疎くなっていたようで、 今回 MacTeX 2020 を使うようになって知ったのだが、 今の MacTeX は原ノ味フォンというフォントをデフォールトで使うようになっている。 これがなかなか良さそうだ。

TEX のデフォールトなのだから、今後お付き合いしていくことになる。

原ノ味フォントは、 源ノ明朝、源ノ角ゴシックをAdobe-Japan1 (AJ1) フォント化したものだそうだ。

源ノ明朝、源ノ角ゴシックは、AdobeやGoogleが開発した、オープンソースのフォ ントである。

どうやら、TEX での日本語フォントについてはもう悩む必要はあまりないようだ。 TEX の導入自体もすごく簡単になりそうだ (というか、「なった」と過去形なのかもしれない)。


ヒラギノフォントの OTC 化の時にも感じたことだけれど、 TEX コミュニティのバイタリティには感心する。


ところで、Ghostscript でどうやって原ノ味フォントを使うのかな。 そちらの方向で調べないと、と思ったら、 /opt/local/share/ghostscript/9.50/Resource/Font/ にはないけれど、 /usr/local/share/ghostscript/9.50/Resource/Font/ には HaranoAji の設定色々ある。 たぶん、簡単に使えるのだろう…

…あ、出来た?今のところ、成功したのは次の2件。

(a)
MacTeX 2020 でインストールした Ghostscript を使う。 考えてみると当たり前か。 この Ghostscript の適当なユーザー・インターフェイスを何か用意すれば、 それで解決かもしれない。
(b)
なぜか分からないが、 /opt/local/share/ghostscript/9.50/Resource/Font/ に原ノ味フォントが入っている Mac があった (自分でやろうとした覚えはないので、 何かがやってくれたのだと思うが、どれがやってくれたのか、よく分からない)。 その Mac では、MacPorts の Ghostscript でも、 原ノ味フォントを使う PostScript ファイルが表示できた。 とにかく動く設定があるのだから、他の Mac にも、 それをコピーすればいいのかもしれない。 MacPorts の Ghostscript は、しばらく待っていれば自動的に直るのかな?

日本語フォントには、長らく煩わされたけれど (思い返すと、ビットマップフォントの頃から色々やっている)、 とゴールが近いのかもしれない。

新学期の作業が一段落したら、フォントの交代になりそうな気がする。


(2020/4/30) これを試すのは5分くらいあれば良いか。
MacTeX 2020 をインストール後、原ノ味フォントを/opt/localの方にコピー
pushd /usr/local/share/ghostscript/9.50/Resource
tar cfz ${SOMEWHERE}/HaranoAji.tar.gz */Hara*
cd /opt/local/share/ghostscript/9.50/Resource
sudo tar xzf ${SOMEWHERE}/HaranoAji.tar.gz
popd
これで MacPorts の Ghostscript で原ノ味フォントが表示できているような気がする。 HaranoAji.tar.gz はフォントの設定ファイルと、 OTF ファイルへのシンボリックリンクだけなので、 30KB ちょっとである。


もしかして、長いこと悩んでいたフォント問題がほぼ解決したのだろうか? 青天の霹靂?



桂田 祐史