``Can one hear the shape of a drum?'' という疑問文をタイトルに持った、 有名な論文があります (Kac [3])。 直訳すると「太鼓の形を聞くことが出来るか?」、 少し意訳すると、「太鼓の音から、その形が分かるだろうか?」 となります。
例えば人間の声の場合、音だけで、大人と子供の区別、 男性と女性の区別がある程度出来るような気がするでしょう。 実際、形についての情報のうち、音だけで分かるものがあるので、 上の疑問は意味がありそうです。
その問の答えは、短く言うと「音だけで形のすべてが分かるわけではない。」 その根拠として、 形が違うが同じ音を発する2つの太鼓が存在することが証明できるから、 となります。
伊谷君の卒研レポートのタイトルは、 S. J. Chapman の論文 ``Drums that sound the same'' (「同じ音のする太鼓」, [4]) は比較的簡単な形の太鼓の例を あげたものです。
伊谷君はそこであげられている例の太鼓の音の周波数を、 固有値問題を有限要素法を用いて数値計算で解くことで確認することを 目標に始めました。 それは比較的簡単に解決しましたが、 その後、Chapman の論文に書いてある数学的議論をトレースしようと努力して、 途中でタイムアップとなりました。 この問題については、浦川 [5]という本もありますが、 伊谷君はなるべく初等的なやり方で Chapman を解読するよう努力しています。
桂田 祐史