「4章 惑星運動の数理」についてコメント

桂田 祐史


Date: 2019年11月18日, 2019年11月29日


11月15日に無事に、藤田・齊藤 [1] 4章が済んだ。 最後は駆け足だったこともあり、少しコメントしておく (ゼミ中に喋ったことが多い)。


Kepler の法則は、惑星の運行の観測記録から得られた経験法則であるが、 万有引力の法則力学の法則を仮定すると、 それから Kepler の法則が数学的に導かれる (Kepler の法則の証明と言って良い) ことは、 Newton が著書「プリンキピア」の中で示した (1687年)。 Newton は微積分の創始者かつ力学の創始者と言われるが (数学の世界でも、物理学の世界でも、偉い人と認定されている)、 この Kepler の法則の証明は、 その二つの「大発明」の威力をもっとも良く表すものとされている。


[1]では、 太陽と地球の大きさを無視して点とみなすことの正当化するため、 太陽と地球の距離に比べて、太陽と地球が小さいことを理由にあげていた (p. 59)。 しかし、適当な仮定の元で、球形の物体が及ぼす重力は、 球の中心にすべての質量が集中している質点の及ぼす重力と 一致することが証明できる。 このことは、以下の$ g$$ G$, $ m$, $ R$ で表す話にもつながるので、 証明は省略するにしても、その事実自体は書いておいて欲しかったような気がする。 (このことは割と多くの本に載っているが、 2016年度の卒業研究レポート (http://nalab.mind.meiji.ac.jp/2015/の川田「ケプラーの法則 -- 2体問題より --」) がある。)


それから、 こういう話をするときには、 太陽、地球の大きさ(半径)と質量、地球と太陽の距離などは、 一応調べておくと良い。ネットで簡単に調べられることなのだから 1


万有引力定数 $ G$ は、実験で得たデータから算出するしかない。 初めてそれに成功した人は、キャベンディッシュという物理学者である。 この話は有名なことを別にしても、学ぶ価値はあると思う。 $ G$ を測定することで、地球の質量、太陽の質量が分かるので ($ G$ と 地球の質量 $ m$、半径 $ R$ を用いて、 重力加速度 $ g$ が表せることに注意。また惑星の運動を観測すると、 テキスト中の $ \alpha$ ($ =G M$) が求められことに注意。)、 $ G$ の測定は、地球や太陽の重さを測る実験である、とも言える。


(以下続く。暇が出来たら書き足すかも。)

二対問題は鮮やかに解けたけれど、 三体問題については色々な研究があり、 ある意味で解けないことが分かった (これは数学の古典の1つ)。 その数値シミュレーションも面白いかも。


宇宙の構造の進化を調べるため、 膨大な数の天体が重力に従ってどのように動くかシミュレーションする、 という研究もある。


Keplerの法則は3つあるが、最初に2つ発表され、 後から第三法則が発表された。その間に、Napierによる対数表の発表があった。 Napier による対数の発見が役に立った、という説がある (2乗と3乗が比例する、という関係は対数でも取らないと、 なかなか気がつかない)。



桂田 祐史
2019-11-29